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『Carrotia~キャロッティア~ ウサギをめぐる冒険 』 



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「完璧なボードゲームといったものは存在しない。完璧な絶望が存在しないようにね。」


僕が初心者のころ偶然に知り合ったゲーム愛好家は僕に向かってそう言った。僕がその本当の意味を理解できたのはずっとあとのことだったが、少なくともそれをある種の慰めとしてとることも可能であった。完璧なボードゲームなんて存在しない、と。

しかし、それでもやはり何か卓を立てる段になると、いつも絶望的な気分に襲われることになった。僕にプレイできる環境はあまりにも限られたものだったからだ。例えばソロプレイについて楽しめたとしても、6人プレイではあまり面白くないかもしれない。そういうことだ。

もちろん、あらゆるゲームを楽しもうとする姿勢を持ち続ける限り、コレクションが増えることはそれほどの苦痛ではない。これは一般論だ。





今、僕は語ろうと思う。

もちろん問題は何ひとつ解決してはいないし、語り終えた時点でもあるいは事態は全く同じと言うことになるかもしれない。

それでも僕はこんな風にも考えている。うまくいけばずっと先に、何年か何十年か先に、救済された自分を発見することができるかもしれない、と。

そしてその時、ウサギは平原に戻り僕はより美しい言葉でゲームを語り始めるだろう。









twitterのタイムラインにこんなツイートが流れて来た。




*1


”セール”という言葉について想像するとき、僕たちはいつも知性より先に感情で反応する。それはきっと人類が貨幣経済という鬼子を出産したときに遺伝子に刻みつけられた外傷によるものだ。


さらに店主のタナカマコト氏は続けた。






”進呈”。その言葉はピンボールのように僕の大脳新皮質を駆けめぐり、すぐに正確に翻訳された。”進呈”、つまりは”無料”。

その電気信号はさらにローランドのJC- 120を通したように増幅され、僕の扁桃体を激しく動揺させた。もちろん他の商品を買うことが条件だったが、それはペーパークリップのように些細な問題だった。

”無料”=”タダ”のボードゲーム。それはデルク・ハートフィールドの小説よりも強く僕の心を掴んだ。その後のどんなツイートも、僕の網膜に映りはしたが、意味を持たないまま風の歌のように吹き去っていった。














ちょうど三鷹に用事があるという男がいた。そいつは”鼠”と呼ばれている。

鼠に話を持ちかけると一瞬眉をひそめたが、合わせて『ハゲタカのえじき』*2を買うと言うと納得した。これで電車賃も浮いた。


その夜、鼠は茶色い紙袋とともに戻って来た。

鼠によれば、店内には数名の客がおり、会計のとき口々に「例のアレを」と囁いていた。皆どこかうしろめたさを隠しているように見えた。鼠も意を決して「アレください」と伝えると、タナカマ店長自ら当たり前のように渡してくれた。そのまま逃げるように店を出た。ということだった。






翌日、僕はクーラーの効いた部屋に、ひとり取り残されていた。

twitterとFacebookは、8月の日曜日らしく、ビーチではしゃぐ若者たちや昨夜の花火大会の写真でにぎわっていた。

名古屋では『ファミリーゲームフェスティバル』*3が開催されており、きっと現地は「この新作、でら面白れーがや!」と歓喜の声で満ち溢れていることだろう。


けだるさと落ち着かなさの入り混じった気分がリビングに横たわっていた。



こんな日には決まってサンドイッチを作ってビールで流し込むのだが、あいにく白米と麦茶しかなかった。



鼠が置いていった紙袋から、ウサギがいたずらっぽく前歯をのぞかせている。

「ウサギは寂しいと死ぬ」というのは迷信だともちろん知っていた。

しかし今、僕はそれを口実にこのウサギと”遊んでやる”ことが、最も誠実な行動だと思うことにした。



僕はダイニングテーブルに”彼女”を誘い出した。



窓の外の太陽は眩しさを増している。

こんな午後に僕が何をツイートしたところで、僕のフォロワー達の気にとまることはないだろう。

僕は虚空に向かって”彼女”との”情事”の実況をはじめた。


☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


























たしかに、ところどころよくわからない箇所はある。

しかし、それは僕の読解力の問題かもしれず、やってみなければわからないゲームは往々にしてあった。

そして「説明しなくてはそれがわからんというのは、つまり、どれだけ説明してもわからんということだ」。

世の中のすべては本質的にそういうものなのだ。先に進もう。




ルールを読んだところ、少なくともこのゲームには優れた点が二つある。まずセックス・シーンの無いことと、それから一人も人が死なないことだ。






言い忘れていたが、これは協力ゲームだ。1人プレイであってもそれは変わらない。僕とウサギは共犯関係にある。





*4










僕はパスタを茹でるときと同じように、慎重かつ大胆に砂時計を逆転させた。

砂粒たちはこのときを待ち望んでいたように流れ落ちていく。

僕は慌ててタイルを並べていく。下手くそなジャズ・パーカッション奏者みたいなリズムで。


砂の流れは女神の微笑がいつもそうであるように瞬く間に途絶えた。












迷路に放たれたウサギは、嬉しそうに跳びはねた。

「ねえ、あなたもこっちに来ないの?」*5




このゲームでは合計3ラウンドでなるべく多くのニンジンを獲得することが目的だ。ニンジンはウサギにとってデニーズのチキンサラダくらい良いものらしい。




世界で一番タフにならなくてはいけない少年にとって山賊はひとつの理想の体現者だ。*6







次の砂時計をひっくり返す。

シェーキーズのピッツァに食らいつくように、僕はタイルと取っ組み合った。思った以上にパズルは複雑であり、僕は必死だった。

それはレモン・スフレをたいらげるには十分な時間のように思えたが、主観的にはエスプレッソ・コーヒーを飲み干すほどの時間もなかった。

 





ウサギはこちらの苦労は気にもかけず、軽快なステップで迷路を進んだ。

「そうだ、ダンスだと思えばいいのよ。」





色彩をもたなくとも、ねじまき烏たちは飛び方を間違えない。






なんだ、いいゲームじゃないか。

誰がどんな噂を立てようと、結局は自分で確かめてみなければわからない。

きっと他の連中は相性が悪かっただけなのだ。

たしかに僕は今エキサイティングできているし、コツも掴んできた気がする。





ワシは迷路上の3本のニンジンを1本にとりかえてしまう。カラス(と呼ばれる少年)は他の鳥を追加する。フクロウについては後で話そう。

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最後の砂時計が逆立ちする。

世界はメタファーだ。だが今はもはや何の比喩表現も思いつかない。パタパタパタパタパタパタパタパタパタパタパタパタパタパタパタパタパタパタパタパタ。*7







ウサギは変わらず涼しい顔で迷路に降り立った。

「ヒッチコックの映画なら子どものころから大好きなの。」




悪い予感というのは、良い予感よりずっと高い確率で的中する。











*8


生は死を内包し、世界の終わりは突然に宣告される。








「つまりは、これで事件は迷宮入り、ってことね。」

彼女はピナコラーダを一口飲むと、わざと大げさなジェスチャーでそう言った。

そして、会計のウェイターに目配せした。



やれやれ。






ここでお別れだ。誰だってそうする。火星人だってそうするだろう。

だが、この日の僕は火星人よりずっと孤独なエウロパ星人だった。





起こってしまったことというのは、粉々に割れてしまったお皿と同じだ。どんなに手を尽くしても、それはもとどおりにはならない。忘れたいものは絶対に忘れられない。

それを知っていながら、僕は急いでタイルをもとの位置に戻し、ダイスを強引に振り直した。






「は?ありえないんだけど。」


ウサギの態度は一気に冷めた。


「そこをなんとか」と僕は懇願した。もういっかい、もういっかいだけだから。


押し問答のあげく、結局ウサギは承諾したが、面倒な話を早々に切り上げるにはそれが最善策だと考えたからのようだった。


「まじでこれで最後なんで。」

とウサギはきっぱり言った。

「これだから素人はねー」そこには軽蔑とも憐れみともおもえる響きがあった。



「あー、まじだりー」

そうして席を立つと、迷路に向かってぴょんぴょん逃げるように消えて行った。







*9






つまりは、僕の敗北だった。





自分に同情するのは下劣な人間のやることだ。

だから僕は努めてポジティブであろうとした。







*10







これで僕とウサギの小さな“冒険”を終えようと思う。


もう二度と彼女に会うつもりはないし、仮にどこかのゲーム会で彼女を見かけることがあっても、お互いに知らないふりをして通り過ぎるだろう。

結局、店長の判断は正しかったのだ。この苦い想い出は、僕が僕の責任でゲーム棚の奥にしまうしかない。



だが僕はこれからも、性懲りもなく、彼女たちを愛し続けるだろう。



どんなゲームよりも、人生はクソゲーだ。


ただ、砂時計が落ちきるまでは、まだ長い時間がかかる。それだけのことだ。







録画した『笑点』を観ようとすると、TVのスピーカーから小さな音で、ずうとるびの『みかん色の恋』が流れ出した、ような気がした。*11
































  • *1
    テンデイズゲームズさん、開店7周年おめでとうございます!→テンデイズゲームズHP




  • *2
    『ハゲタカのえじき』は初心者布教用カードゲームの基本中のスタンダード→ハゲタカのえじき - Wikipedia。スベリしらずの鉄板ゲームです。なんとなく購入チャンスを逃していたのですが、セールだったのでやっとこさゲット。




  • *3
    『ファミリーゲームフェスティバル』→ファミリーゲームフェスティバル2017HP日本全国にボードゲーム関連イベントがどんどん増えてきて嬉しい。




  • *4
    準備はこれでよく、なかった。手元のタイルは表向きでした。他にも気づいていない間違いがあったらごめんなさい。




  • *5
    ウサギといえば、秋からはじまる『仮面ライダービルド』。基本の姿が「ウサギ×戦車」なのです。普通に考えると「???」でしょうが、今までのライダーも「フルーツ」とか「偉人」とか攻めたモチーフに恵まれているので、ビルドはむしろ普通だなと感じてしまっています。毎年最初は「今度ばかりはダサすぎる」と思っても放送開始してみればカッコよくみえてくるので、第一印象で「クソ」と決めつけずに観ましょう。→仮面ライダービルド|テレビ朝日

    ビルド





  • *6
    その他のプレイヤーカードの能力は1ラウンドに一度しか使えません。

    「クラウン」鳥1枚を入り口に動かす。
    「幽霊」ウサギを好きなタイルに動かす(絶対強すぎる!)
    「ミイラ」鳥の効果を無視する
    「老水夫」ウサギを直前のタイルに戻せる
    「吸血鬼」ウサギを2回連続で動かせる

    IMG_20170810_164349[1]





  • *7
    このタイル配置の部分が、リアルタイム協力ゲームのキモなのだと思いますが、これを多人数でやってもただただ混乱して大変なことになるような.....。そのわりに「入り口と出口が繋がらない場合は、ニンジン2本支払えば時間無制限で組み換えていい」ってどうなのさ。タイルのめくり運によっては、どうやっても不可能だし。




  • *8
    ここ、ほんとに間違えてないかものすごく不安。間違えてたら恥ずかしすぎる。





  • *9
    とにかく鳥が理不尽すぎる!ダイスによって明暗が分かれすぎです。今回、前半はわりと楽しめたのは、たまたま鳥に出会わなかったからだと思います。なお何度もいいますが鳥は鳥でも『ハゲタカのえじき』は鉄板で面白いです。




  • *10
    ほんとにソロプレイならギリギリ楽しめるとおもいます。ただし”ワリキリ”が大事!




  • *11
    座布団運びの山田くんは昔アイドルでした。「好きなんだ~ 好きなんだ~ 逆立ちしたいほど~」







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しゃかえもん

Author:しゃかえもん
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埼玉県越谷市あたりに生息。

108の煩悩を操る煩悩マイスター。

非電源系ゲーマーです。(ボードゲーム、カードゲーム、TCG,TRPGなど)

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